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2019年3月 2日 (土)

12色で描ける『はじめての日本画教室』 安原成美 (埼玉)

 平成31年2019.2.27 毎日新聞夕刊、記事より
   ※ <死の直前まで出版計画> キーンさん 4月新著刊行
 日本文学の研究者、ドナルド・キーンさんの新著が4月上旬刊行されるという。記事を読んで、96歳、死の直前まで何冊もの書籍出版計画というのに驚き、励まされた。

 

   ※ <橋本治の死> 日本語の可能性広げた
 橋本治さんは今時まだ若い70歳で死去。「追悼・橋本治さん」(毎日2.7)の書き出し、
    ――― 訃報を聞いて言葉を失った。早いよ。早すぎるよ。私も70歳だが、この年で亡くなるなんて。偉大な才能が、ああ、逝ってしまったよ(「権威から自由 批評鋭く」(橋爪大三郎・社会学者)。

 

 ずいぶん前に書いた記事にアクセスがあった。
     “ドナルド・キーン『明治天皇』 / 柴太一郎(福島県)”
    http://keyakinokaze.cocolog-nifty.com/rekishibooks/2011/05/post-13bc.html
     “『桃尻語訳 枕草子』橋本治”
    http://keyakinokaze.cocolog-nifty.com/rekishibooks/2010/05/post-6e6a.html

 

 「春って曙よ!」 井上ひさしが「こういう仕事こそ、真の現代語訳というべきだろう」と絶賛する『桃尻語訳 枕草子』 今、引用するなら<第二段 三月>ね。
      ――― 桃の花がね、今咲き始めるの。柳なんかが素敵っていうのは、もうもう、モチロン! それもまだ、繭みたいに花の穂が丸まってるのが素敵ね・・・・・・
 良い感じに咲いてる桜を長ァく折って、大きな花瓶に生けたのこそが、素敵なのよォ。桜の直衣(のうし)に出()だし袿(うちぎ)のシャツ・アウトして・・・・・・すっごく素敵!
   橋本治の註によると、桜の直衣は、表が白で、裏が紫か赤で全体がほんのり桜色に見えるような生地でできている貴族の普段着のこと。
 たった数行でも春の緑、桜色が目に浮かぶ。日本人の色彩感覚は千年たっても変わってないかもしれない。

 

Photo 文章から季節や色を自分なりに想像するのは楽しい。脳内でなら自由自在に描けるが、美しい花や木々、佳い景色を目にすると、詩や歌が詠めたり絵が描けたらいいなあと思う。絵心のある人は実際に筆をとるでしょう。そんなことを考えていたら、本屋さんに『12色で描ける はじめての日本画教室』があった。
 表紙ををみると、12色でこんなに素敵で微妙な色が出せるのか不思議。ページを開くと、きれいな挿絵とともに技術や手順が解説されていた。
 日本画のことはまったく知らないので、岩絵具・絵絹・膠鍋とか画材や用具とばも新鮮、描かないまでも知るとたのしそう。日本画を味わう助けになりそうと購入した。

 表紙を飾る[晩夏]で使用した天然岩絵具は、白緑・黄土・銀泥・ラピスラズリ・墨・焼黄土・朱・金泥の8色。
 「日本画教室」の本のページをひらいて、基本・技法・描く・応用編と順にページをくると、こういう世界もあるのだと感心。挿入された絵や図がきれいで、色合いも好ましくゆったりした気分になる。
 以下は、美術史家・山下裕二さんの記事 <安原成美 岩絵具きらめく、まっとうな日本画>をもとに、若き日本画家・安原成美を紹介。

 

          安原 成美 (やすはら しげみ)

 

 1984昭和59年、埼玉県浦和(さいたま市)生まれ。
    幼稚園のころ、春日部に転居。
    両親がともに美術教師でおさないころから美術に親しむ環境にあった。
    高校では工芸コースを専攻。
 2006平成18年、東京藝術大学美術学部絵画科日本画専攻に入学。
     安宅賞・卒業制作奨励賞・野村美術賞・平山郁雄文化芸術賞そのほか受賞。

 

 2010平成22年、東京藝術大学美術学部絵画科日本画専攻卒業。
      保存修復日本画研究領域に進学。この研究室において、光明院障壁画・鶴林寺柱絵・キジル石窟などの調査、復元に従事する。これらのプロジェクトに参加したことは得難い経験となり、糧となった。

 

 2012平成24年、芸大大学院文化財保存学専攻 保存修復日本画研究領域修了。
 2014平成26年、菱田春草の技法、化学分析プロジェクトに参加し、「落葉」(福井県立美術館蔵)の蛍光X線分析に従事。作風に大きな影響を受けた。
 2016平成28年、博士号取得。日本美術院院友。
    現在は日本やフランスを拠点として個展、グループ展を開催。著書に『基礎から応用までわかるデッサンの教科書』がある。

2017平成29年、京都智積院本山 障壁画 長谷川等伯復元研究(2011~16)での成果芳泉文化財団から“最優秀賞”贈られる

2019令和1年5月、『Seed 山種美術館 日本画アワード2019  ―未来をになう日本画新世代―』“大賞”
    日本画専門の山種美術館が主宰する、今一番人気のコンクール―――若い作家達の“日本画登竜門”といわれているコンクールで大賞を受賞。美術館買い上げでパブリックコレクションとなっている。

 

Photo_2

 2018平成30年、靖山画廊で個展で私(山下裕二)は初めて彼(安原成美)作品をみた。
 ・・・・・・ラピスラズリも白緑も金箔も、現実を忠実に再現するための色彩ではない。彼の脳内でヴァーチャルに変換した末に選び取られた色彩であって、その選択に際しては、なによりも岩絵具の美しい発色が重視されているのである。

 ・・・・・・ 安原成美による、岩絵具きらめく美しい発色を観て、私が期待する「まっとうな日本画」を目指しているな、と思ったのだった。まだま改善する余地はあつけれど。

 ・・・・・・ 「晩夏」ススキ、ウド、ヤグルマソウ、ササ、タケニグサ、フキ・・・・・・。安易にデジタル写真に頼るのではなく、植物を眼前にして懸命にスケッチし、絵具を吟味して本画に臨む彼の姿勢が見えてくる・・・・・・

 

 

 

 
余談。
   タケニグサ:竹似草・博楽回。
 けし科の多年生草本。夏、白色の小花をつける。有毒植物。茎・葉の煮汁を「たむし」に塗布し、また害虫駆除に使用。竹を煮るとき入れると軟らかくなるといい、この名がある。和名タケニグサ。別名チャンパギク(『広辞苑』)。
   
 ときどき物語で見かける竹似草、厳しい場面に出てくる。一体、どんな草なのか花なのか気になっていた。それが、このほどタケニグサの絵に出会い、辞書をひいてみた。なるほど有毒植物とあるし、雰囲気もそれらしい。
 「晩夏」に描かれたタケニブサ、深い意味がありそう。

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