ペンシルバニア大学、明治日本の「同窓会名簿」
『ある明治人の記録』会津人柴五郎の遺書
明治維新の陰で北の辺地で飢えと寒さの生活を強いられた会津少年の物語、若い頃読んで“歴史は勝者が書いている”と気付かされた。それまで「明治維新を讃える」ことしか知らなかった。歴史には裏と表、側面があるのだ。とはいえ、涙ながらに読んだ本をいつとはなしに忘れていた。
それから十数年、ウッドハウス暎子著『日露戦争を演出した男モリソン』で柴五郎と再会した。ロンドンタイムスの記者モリソンと友情を深め、互いの祖国のため情報を交換する北京日本公使館付陸軍武官が柴五郎その人である。
この柴五郎中佐が雪の日に履き物がなく裸足でお寺の学校に通ったあの少年と知って、胸がいっぱいになった。下北半島恐山の麓で死と隣り合わせだった境遇からどのように道を切り開き北京へやって来たのだろう?その後の歩みは?興味津々自分で調べてみよう。
こうして柴五郎を調べはじめて兄達も賊軍会津藩士として困難な生活をよぎなくされたが、希望を捨てず生き抜き明治日本で活躍したと知る。五郎のすぐ上の兄、柴四朗(東海散士)はアメリカ留学さえ果たしている。
着の身着のまま、食べるのもやっとの四朗が留学できたのは谷干城の縁で豊川良平を知り三菱の援助を受けられたからである。
渡米した四朗はサンフランシスコ商法学校を経てマサチューセッツ州ハーバード大学に入学したが、求める学問のためフィラデルフィアに移りペンシルバニア大学に入学、経済学士の学位を得て卒業した。(『明治の兄弟 柴太一郎、東海散士柴四朗、柴五郎』第二部アメリカ留学参照)
ペンシルバニア大学には三菱の3代目岩崎久弥も留学、大正元年の同窓会名簿によれば会長をつとめている。名簿は東京都文京区の三菱資料館に保存されてありグラバーの息子倉場富三郎や女子の名も見え、なかなか興味深い。
興味のある方は会員名簿を書きだしたので続きをごらんください。
「大正元年改正・費府大学同窓会規約 会員名簿」
*費府 ペンシルバニア
ABC順で数字は入学~卒業年
赤星鐵馬 予備騎兵少尉 1905~1909
BRYAN,JOHN INGRAM 東京外語学校・海軍軍医学校教授 卒業1908
FAUST,ALLEN k.東北学院教授 卒業1909
長谷川孝太郎 1910~1911
林 民雄 日本郵船専務取締役 1885~1889
今立吐酔 横浜地方裁判所嘱託通訳 1875~1879
伊丹二郎 日本郵船神戸支店長 卒業1880
伊藤重治郎 早稲田大学教授 1906~1908
伊藤鐐蔵 合名会社河伊商店社員 1905~1907
岩崎久彌 三菱合資会社社長 1888~1891
泉 量一 東京石川島造船所技師 1906~1907
JEFFERYS,HENRY SCOTT. 陸軍大学校教師・米国監督教会長老 卒業1879
川本怐蔵 医師 1887~1890
川崎 肇 銀行員 1905~1909
木下淑夫 工学士・鉄道院営業課長 1904~1905(退学)
河野徹志 河野病院長 1891~1892
倉場富三郎 会社員 1891~1892(退学)
串田萬蔵 三菱合資会社銀行部副長 1887~1890
松方正雄 浪速銀行常務取締役・共同火災海上保険会社取締役 1900~1904
小栗常太郎 会社員 1905~1907
岡部彦長 (名のみで記載なし)
奥村鶴吉 東京歯科医学専門学校幹事 1904~1906
尾崎稀三 歯科医師 1903~1906
佐伯理一郎 京都佐伯病院長・文部省醫術開業試験委員 1886~1888
齋藤浩介 日立鑛山(銅山)事務所長 1905~1906(退学)
酒井祐之助 酒井建築事務所主 1904~1906
柴四朗 著述家 1882~1884
須藤吉之祐 私立立教大学幹事 1897~1900
菅沼友三郎 歯科医師 1888~1889
杉浦貞次郎 陸軍大学教授 1893~1894/1898
鈴木復三 歯科医師 1902~1905
高木兼寛 医科学博士・貴族院議員 1906名誉学位
高木隆吉 三井合名会社社員 1907~1909
高田正一 会社員 1902~1903
竹内周蔵 大阪商船会社社員 1885~1886(退学)
立石佐次郎 貿易商 1895~1896
寺島誠一郎 貴族院議員 1889~1895
坪井正太郎 建築設計 1906~1908
塚本ふじ子 兵庫県立高等女学校英語科主任 1894~1895(退学)
上田良蔵 海軍少佐 1908~1910(退学)
涌谷 泉 医師 1906~1908
綿引朝光 東京慈恵会醫院医学専門学校教授 1905ヨリ1906マデ在校
WHITNEY,WILLIS NORTON 私立赤坂病院長 1879~1881
安川清三郎 鑛業 1896~1900
横山八十七郎 会社員 1904~1905(退学)
*「入学年がなく卒業年のみ」並びに「退学」は名簿のまま。
*このほか「分科」「学位」「爵位・勲等」「住所・電話番号」の記載あり。
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