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2010年1月27日 (水)

スイス人が書いた『絵で見る幕末日本』

『絵で見る幕末日本』
             (エメェ・アンベール  講談社学術文庫)

 奈良・京都へ友人とおばさん二人旅。古都の緑は美しく修学旅行いらい何十年ぶりの奈良、法隆寺、中宮寺の弥勒菩薩、春日山では鹿がたくさんいて思わず逃腰に。そして京都、尊皇攘夷で騒然とした幕末の戦跡で特に敗者の側、会津藩宿所などを訪ねました。
 奈良・京都ともに行交う人の中に何組もの外国人がいました。いろいろな言語が聞え、お国は見当がつきません。
いずれにしても神社仏閣や文化財を、ガイドブック片手に興味深そうに見学しています。その一つ一つを ていねいに味わっている外国人に会うと、誇らしいような嬉しいようなでした。
     
 今でも日本に興味を抱いて海外から来る人は少なくないようですが、これが鎖国をといて開国したばかりのヤング・ジャパンではどうでしょう。 そのころの日本は、尊皇攘夷運動が燃えさかり、外国人の暗殺事件、アメリカと条約を結んだ井伊直弼は暗殺という情勢でした。

  

 19紀ヨーロッパの産業発展は、紛争にひるむどころか武力を用意してアジアに市場を求め、日本の封建制度の扉もこじ開けました。本書を残したアンベールも通商を求め来日した一人です。彼はスイス時計業組合の会長、スイス参議院議員の地位を日本市場の開拓に役立てたようです。
 団長アンベール以下スイス使節一行は航海中に生麦事件を知りますが、恐怖を感じることなく長崎へ。そしてオランダの軍艦で江戸に入りました。その航海から「自分で書いた日本人」が始ります。
 長崎・京都・鎌倉など各地の様子、江戸の町、床屋、本屋、剣術道場、武家屋敷のたたずまいがよみがえります。鉛筆で描かれた細密画はある意味写真より分りやすく、140枚もの絵だけを見ても楽しめます。また著者は、豊かな表現力で、私たちが忘れてしまった良き日本と国民性を記述しています。どの頁からでもご覧になってみませんか。本書を手にすると幕末日本に目を奪われることでしょう。    

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