『アメリカ彦蔵』(吉村 昭)/『海の隼』三浦按針 (大島 昌宏)
『海 の 隼』参謀・三浦按針(大島昌宏 著 学陽書房)
21世紀に入ってもう10年目、お正月は何かを始めるいいきっかけです。とは言うものの、さて何をどうしよう。「まっいいか、今年も元気に動ければ」平凡なところに落ちついてしまう私です。せめて初夢で宝船に乗るとしましょう。ところが宝船どころか太平洋上で難船の悪夢、現実だったらどうなる。平凡でいいといっても運命に翻弄されるのは間違いない。しかも400年 150年前となると今よりずっと困難な時代です。しかし、表題の2人は逆境から抜けだし歴史に名を残しました。
1600年 イギリス人ウイリアム・アダムスが乗ったオランダ東インド会社船リーフデ号は、太平洋を横断し東洋に赴く途中難船、日本に漂着しました。船乗りの子アダムスは造船所に奉公し造船・航海・砲術・天文・幾何学に外国語も身につけます。イギリスがスペイン無敵艦隊に襲われた時、自ら建造した船をひっさげドーバー海峡に参戦、その勇猛ぶりは「海の隼」と称えられました。
漂着した日本はあたかも関ヶ原合戦の最中。リーフデ号から運び出した大砲で石田三成陣地を砲撃します。異国の地で戦をするとは、アダムスも夢にも思わなかったでしょう。 『海の隼』は家康の政治顧問、三浦按針ことアダムスの生涯を描きつつ、ヤン・ヨーステン(八重洲の地名由来)等リーフデ号乗組員との確執、ジェスイット派宣教師との争い、貿易で対立する外国人たちまで、鎖国以前の日本の状況を映し出して読者をあきさせません。
『アメリカ彦蔵』 (吉村 昭 著 読売新聞社)
名は知るが事績を知らない。そういう人物を歴史から引寄せ読者に提供する吉村昭の『アメリカ彦蔵』。
1850年 彦蔵少年は紀州沖で難船しアメリカ船に救助されますが、鎖国日本に帰れません。彦蔵ら漂流民17名はハワイや清国の底辺で言葉も分からぬまま暮らすはめに。困難ゆえちりぢりになりますが、彦蔵は人に恵まれアメリカ本土に渡り仕事を得ます。その上驚くことにピアース、ブキャナン2人の大統領に面会さらに南北戦争を体験、リンカーン大統領とも握手します。やがて日本は開国、彦蔵は神奈川領事館通訳として晴れて帰国。彦蔵得意の時期とはいえ、幕末の動乱に日本人でありながらアメリカ国籍という身、死の危険にさらされます。類のない体験をした彦蔵とアダムス、歴史そのものを身をもって生きた2人の物語、読んでみませんか?
(川口市新郷図書館「ぶっくす」より)
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