井上ひさしさん「読んでもらうこと幸せ」
2010年4月9日 井上ひさしさんが75歳で亡くなられた。死去のニュースは日本を駆けめぐり様々な方たちが想いを寄せ讃えました。
ほんとうに短い文章ではその魅力や才能が顕せないほど深く大きい人物です。「博覧強記、言論の自由、平和への行動、鋭い言葉の感覚、強者への怒り根底、新しい喜劇、重い題材を楽しく」。氏へ捧げるどのことばにも同感ですが、なかでも毎日新聞「余録」(4・13)にとくに共感しました。
―――(アメリカ人の詩を引いて)悩みごとや悲しみは最初からあるが、喜びはだれかが作らねばならないという詩です。この喜びのパン種である笑いを作り出すのが私の務めです。
―――人の心を自由にし、豊かにするたくさんの言葉の蝶番を残し井上さんは逝った。人生も世界も変える笑いから生まれた日本語のかけがえのない富だ。
大人になっても気分は文学少女だった私は「文学」とか「学」のつくようなかたい本ばかり読んでいました。それが、子育てで時間がままならない時、移動図書館で井上作品に出会いました。またそのころ夕飯の支度をしながら見ていたのが「ひょっこりひょうたん島」でした。何ておもしろいんだろうと楽しんで見てましたが、後で作者が井上さんと知ってなるほど納得でした。
はじめて読んだ作品を思い出せないが、とにかく面白くて次々読むうちに「笑い」がどんなに好いものか、人の心を「自由にし豊かにする」かに気付きました。それからは読書の巾が広がり、たぶん了見も広くなったかと思います。
そして読めば読むほど深い知識があるのにやさしく表現できててすごいと思いました。「難しいことをやさしく」、凡人には言葉数が多くなりなかなか難しいです。そして「ふかいことをおもしろく」を実践、これはもっと難しい。
そのうえ井上さんは里山、米作りの大切さから憲法の問題まで、積極的に講演し行動していました。テレビや講演会で耳にした穏やかな語り口が耳に残ります。
ただのおばさんがいうのもなんですが、ほんとうに惜しいです。せめて最後の言葉「読んでもらうこと幸せ」を感じていただけるよう作品を読もう。さて山のようにたくさんある長編、短編小説、戯曲、エッセイ等など、どれにしよう。
中井けやきの“井”は井上ひさしさんの井を勝手にいただきました。文章も井上さんならしない体言止めとかするし申し訳ないですが使わせてください。
ご冥福を心からお祈りいたします。
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