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2010年9月23日 (木)

『映畫五十年史』筈見恒夫 昭和17年発行

50  先に『韓国映画史』で日韓の辛い時代を垣間見た。暗い歴史をのみ込んだ上で韓流ブームに触れるとホッとする。今はブームと言うより韓流というジャンルが定着したようだ。それで日本は?と振り返ってみたが何も知らない。そんな折しも古本カタログに映画史があったので取り寄せた。

 『映畫五十年史』は戦中の発行らしく、巻頭は情報局国民映画受賞作品【将軍と参謀と兵】(日活)、次ページも同受賞作品で【父ありき】(松竹)の写真が載る。最終章は「大東亜映画への構想」で下記引用のように勇ましい。このように書かなければ刊行できなかったのだろう。
 現在使わない言葉は資料として原文のまま。外国名は殆どカタカタだが10章はドイツを“独逸”と表記、枢軸国としてかな。

 ・・・・・・われわれの傑れた映画意志を、われわれの激しい映画闘志を、われわれの鍛えた映画技術を、支那大陸に、満洲国に、南洋諸国に持ち込んで行かうではないか。すべてのアジア民族が一つになつて、大東亜映画なる実態を持たうではないか(後略)。

 巻頭巻末とも戦時色だが、中身は検閲の時局とは無縁のような映画評論、映画史で興味深い。映画の始まり、映画関係者の情熱、俳優のエピソードや演技のこと。輸入業者や制作サイドにも詳しく、また欧米の映画にもよく通じている。経歴をみれば納得であるが、それにしても博覧強記だ。本当に映画を愛しているのが分かり、DVDで楽しむのもいいけど、たまには映画館へ行こうと思った。
 写真もかなり掲載されている。洋の東西を問わず映画のワンシーンはもちろん女優の写真も数々あり、映画の雰囲気を伝えている。きっと、この『映画五十年史』は復刻されて読み継がれていることだろう。
 本書は中身がありすぎ、これはと思うところに付箋を貼ったら付箋だらけになってしまった。これじゃ丸写しになりそうで項目を抜粋してみた。西暦は筆者。

『映畫五十年史』鱒書房

第1章 明治年代の映画(明治29年――45年1896~1912)
        エジソン/活弁の元祖/北清事変の従軍撮影/検閲受難/南極探検映画etc
第2章 映画事業の企業化(大正元年――4年0912~1915)
       日活の創立/新派劇『復活』『不如帰』の当り/尾上松之助etc
第3章 大戦と欧米映画(大正元年――9年1902~1920)
       アメリカ・イタリイ・フランス・ドイツ・ロシア映画/大戦中のヨーロッパ映画展望
第4章 改革運動の台頭(大正3年――10年1914~1921)
       新派悲劇の全盛期/松竹キネマの初期/新劇運動と映画館etc
第5章 蒲田映画と向島映画(大正9年――12年1920~1923)
      「枯れすすき」の小唄/映画女優の台頭/鈴木謙作のリアリズムetc
第6章 映画劇の成長期(大正12年――昭和初期1923~)
     大震災と映画/帝キネ/文芸作品の映画化/時代劇の新しい風潮etc
第7章 欧米映画の影響(大正10年――昭和3年1921~1928)
      ドイツ映画戦後の退廃と表現芸術/南欧および北欧映画/アメリカ映画の排斥etc
第8章 傾向映画前後(昭和2年――8年1927~1933)
      時代劇に現れた反抗精神「斬人斬馬剣」*写真(右上)/サイレント時代劇の末期etc
第9章 トーキーと日本映画(昭和2年――13年1927~1938)
      監督システムとプロデュウサー・システムの対立/トーキー作家の足跡
第10章 大東亜映画への構想(昭和12年――16年1923~1941)
     支那事変とニュース映画/映画法と独逸映画界/枢軸の映画国策/対米英映画への宣戦/朝鮮映画の過去と現在/臨戦体制と日本映画etc

筈見恒夫:本名・松本英一(明治41――昭和33年1908~1958)東京下町生まれ、大正の初めから映画を見続ける。
 22歳ころ南部圭之助らと『新映画』創刊。サイレント映画「もだん聖書 当世立志読本巻一」脚本。25歳東和商事(東宝東和)の宣伝部長に就任ヨーロッパ映画の宣伝に尽力。のち映画プロデューサー。42歳で東和映画(東宝東和)宣伝部長に復帰。49歳没。著書『映画と民族』『映画の伝統』ほか。
    [出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』]

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