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2011年12月23日 (金)

歴史をつくる人人、岩手の座敷童子も?

   人気があっても読もうと思わない小説もあれば、難しいのに読みたい本もある。はじめて大江健三郎を読んだ時よく分からなかった。今でも解ってないが好きだ。難しいけど好きは中国古典の研究者・吉川幸次郎(1904明治37~1980昭和55)もそうだ。
 漢文を習った人は吉川幸次郎の『新唐詩選』『人間詩話』、「杜甫」についてなど読んだかも知れない。大きな業績を残し多くの後進を育てた学者はエッセイも深い。
 エッセイ集『他山石語』(毎日新聞社)を手にしたのは、米国フィラデルフィアにおける東海散士の跡を辿り書いているから。けれどもいまは巻末の対談(吉川幸次郎×尾崎雄二郎)に注目。

 吉川:(大学の講義)準備を忠実にやるのはなかなか苦しい。ところでこれは日本の先生が模範として学ぶべしと思った人があるんですよ。ドナルド・キーン君は,自分が次に講義をすることを一度テープに吹き込んでみて、自分で聞くというんですよ。ぼくは感心しましたね。

 つい先ごろ“日本国籍を取得したキーンさんが書斎を再現し記念館を新潟県柏崎市に復元”を読んだばかり。そこへまたキーンさんの人柄が伝わるエピソード。公民館の狭い講座室の若いキーンさん、あの笑顔ほんものだったと今さら納得。どうりで今でもはっきり覚えているわけだ。ほかに印象的だったのが歴史をつくる人人についての話。

吉川: 声なき多数者、多数者といっても反抗した多数者、農民一揆をおこした人のみがとりあげられることはないでしょうか。農民一揆をおこさない、しかし善良な庶民だった人たちをもっと採り上げていいんじゃないかと思う。

吉川: それはやはり大きな意味での歴史を進歩させている人だと思うんです。それは近くしていえば、われわれだってべつにことごとしくいまの歴史の進展にそう寄与していないですよ。(中略)しかし、多くの人間の日常生活の集まりは、やはり人間の進歩に寄与していると思う。 

 平凡な日常生活も吉川教授がいうと意味をもち、旧家の奥座敷に住むという精霊も多数者の仲間にという気になる。いきなり何の話と思うでしょう。実は、たまたま人名辞典を開いたら「座敷童子」の項が・・・・・・エッ、精霊も人と同列?粋な編集者がいるものだ。せっかくなので説明を読んだ。すると“ざしきわらし”は仲間かもしれないと思えた。3・11大震災でたいへんな目に遭っている人人を護ろうと出没していそう。

 座敷童子: 岩手県を中心に東北地方に伝承される精霊。寝ている人の枕の位置を変えたり深夜には家の中を歩き回ったりするが、一番の特徴は座敷童子の居る家は栄え、いなくなると没落すると信じられている点。家の守護神としての性格をもつ。
 ちなみに、座敷童子の次は「指原(さしはら)安三」。明治政治史のテキストともなる名高い『明治政史』を編纂・刊行した漢学者(『コンサイス日本人名辞典』三省堂)

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