『日本教育小史 -近・現代-』(山住正己)
年が明け受験生はもう大変、センター試験のさなかである。明治維新後、良くも悪くも勉学に励めば身を立てることができるようになった。
家を継げない次・三男らは養子先がなければ部屋住みでくすぶっているしかなかった。戊辰戦争に敗れた賊軍の子弟。そんな士族の若者、町人も勉学に励めば立身の糸口をつかめる世が来た。必死の勉強ぶりは察してあまりある。
それから150年近くたつも教育熱は衰えない。2011.3.11で考え方に変化が出ているようだけど、そういう間にも受験はある・・・・・・あれこれ考えていたら昔読んだ教育の歴史を書いた本を思い出した。以下1997年に書いたお勧め文、今でも通じるような気がして。
長い休みに生徒さんは「課題図書」を読む宿題があるでしょう。例えば『ヨースケくん』(那須正幹著・ポプラ社)“小学生はいかに生きるべきか”というのがあります。
今どきの学校は? ヨースケくんの悩みは? 読んでみたいけど、感想文を押しつけられると嫌になりますよね。けれど
「読まないともったいない」ある新聞にあった女優木村佳乃さんのことばです。感想文のせいで、本を読まないとしたらもったいないです。
いい文を書こうとするとおっくうな作文ですが、今は立派なことを並べたてるのではなく、見たまま感じたままをありのまま書けます。これは何でもないことのようですが、こうなるまでには歴史があります。作文を綴方運動として教育の場に血を通わせようとした教師たちがいました。
無着成恭編『山びこ学校』(山形県)を知る人は多いでしょう。生活綴方をたどっていくと、夏目漱石の弟子・鈴木三重吉主宰の雑誌『赤い鳥』、大正デモクラシーへと行きつきます。
戦後、教師が学校周辺の地域に足を運んで、子どもをめぐる問題に目を向け、教育計画をたてる試み、川口プランが全国の注目の的になったそうです。
作文一つとっても社会と学校は、時代と深くに関わっているのがわかります。関わりどころか学校は戦争など大きな時代のうねり、社会の荒波にさらされます。江戸幕府が倒れて明治に身分制度が廃止され、学問で世に出られるのはよいと思いました。しかし、日本全体が貧しく誰にでもチャンスが巡ったのではなく、また学歴社会はここから始まったわけで考えさせられます。
『日本教育小史』を読んで、今のよいとは言えない社会状況は「なるべくして」そう感じました。問題が大きすぎるけれど時にはこうした本、幕末維新から昭和まで教育の歴史を読んで、来た道をふりかえってみませんか。ここから行く道の手がかりが得られるかもしれません。
知人が中学校の先生になりました。その彼女に誰もが「大変ね。気力体力とも大丈夫?」まるで荒野に旅立つ人に言うよう。先だって彼女に会いました。どう?
「一年生の担任。みーんな可愛いの」と笑顔でした。教育の荒れがいわれて久しいですが、皆がみな真っ暗でもないようです。
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