「白磁の人」 浅川巧
映画「白磁の人」を見て涙がとまらなかった。日本の植民地朝鮮において育まれた友情、それがどんなに難しく尊いことか察してあまりある。
朝鮮の白磁を愛した浅川巧は23歳で朝鮮総督府農商工部山林課勤務のため民族と民族が憎しみ蔑みあう朝鮮に赴き植林に励み、ついには朝鮮の土となった人物である。また、日韓双方の歴史教科書に取り上げられている希有な日本人でもある(道――白磁の人――プログラム)。
監督・高橋伴明は「お互いを受け入れて共に生きる」を胸に制作に励んだよう。映画の主人公、浅川巧とイ・チョンリム(李成林)を演じた日韓の俳優、吉沢悠とペ・スビンも役柄そのままに友情を深めたという。日韓のスタッフも互いに理解し協力して制作にあたったそうだが、画面には過酷な現実が映し出される。
威張りくさっている日本軍人に追い立てられる朝鮮人を見るのは辛い。とはいえ実際は映画よりもっと非道いこともあったんじゃないかと。された方は忘れないし言い伝えるが、した方は無かったフリに・・・・・・日韓の歴史年表を見、当ブログに書いた事からもそう思う。
韓国併合/伊藤博文と安重根 (2010.7.27) ・ 光復映画/韓国の8月15日 (2010.8.15) ・ 『映画五十年史』筈見恒夫 (2010.9.23) ・ 日韓の映画史からみえる時代 (2010.12.18) ・ 朝鮮の土となろうとした明治の歌人、鮎貝槐園 (2011.6.09) ・ *有光教一、日韓の架け橋となった学者 (2011.6.13) ・ 『柳宗悦と朝鮮』 (2012.2.19)
こうして並べると映画は堅苦しく説教調になっているのではと思われそうだが、見終わった後、涙を流しながらも爽やかな感じすらした。どうしてそうか、うまく伝えられないその辺をプログラムから引用させていただく。
けやきのブログⅡ<2011.6.13 有光教一、日韓の架け橋となった学者>
佐藤 忠男 <日韓相互理解の映画の歩み>
韓流ブームのなかでやっと映画にもなる機運が生じたわけだが、本当に素晴らしい人であり、映画としてもこういう人物を世に広く知ってもらうことが重要だという誇らしさにあふれている。浅川巧を演じるのは吉沢悠であるが、偉い人立派な人というより、緑を愛した人、禿げ山を緑化するという仕事に本当に嬉々として打ち込んだ人として表現されているところがいちばんいい。韓国スター、ペ・スビンが、浅川巧のその一途さをハラハラしながら見守り、助言し、協力し、そして強い友情で結ばれるに至る朝鮮人の同僚チョンリムを演じているが、風格のある演技である。
―――中略―――
ありふれた民具にすぎないと思われていた白磁の壺などに特別な美を認め、それをどう理解するかということはたいへん映画的な問題である。その点でも興味のつきない映画だと思う。
(道―白磁の人―プログラムより)
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