『横書き登場』―日本語表記の近代―
K大学夏スクーリング、自分の最初の授業は「国語学」。何だか難しそうと構えていると、屋名池誠先生はいきなり「みなさんは日本語知ってますか?」
えっ、何の事、どういう意味、戸惑っている間にも授業は進み、どうやら日本語をつかっているけれど、「日本語の仕組みを知らない」から日本語を知らないことになるかと。
6日間の講義、興味津々だったのでさっそく記事にとノートを拡げたが、あまりに内容が濃く分量も多く纏めきれない。屋名池先生の授業中、目からうろこが度々。ほんの一例をあげてみるが、聞き間違いや意味の取り違えがあったらと少し心配。
*正しい日本語ってどういうもの――使われている日本語は正しい。通じないのは正しくない。ある範囲で通じていれば正しい。
*共通語と方言に優劣はなく、役割分担してどちらも必要。方言は基本的に音声語、地元同士が話すとき使った方がいい。
*ウザイ・キモイなど言葉の乱れをいうが日本語に則ってる。自分と違うから変に思う。
*日本語が美しい、美しくない――自分の使っている日本語(色眼鏡)に気づかず違うと言ってしまう。言葉そのものにきれい、汚いはない。
*敬語――社会の上下関係、相手がここにいて自分はこの辺と解ってるのを表している。心理的に親しい、親しくないからも使い分け。敬語にもいろいろな表現がある。
*翻訳――明治期たくさんの語が翻訳されたが、自由・個人・社会など言葉そのものの意味だけでなく概念も。壮大な建物もレンガを積み上げることによって作れる。レンガ=概念で思想が組み立てられる。
文字表記・字形・字体など具体的で分かり易かった。説明にあげる例がまた興味深く、失礼ながら屋名池先生の頭の抽出のぞいて見たいと思った。そこで著書を検索すると、『横書き登場』日本語表記の近代(岩波新書)があり、読んで好かった。当ブログをお訪ね下さる方ならきっと私同様はまるでしょう。それと図版が豊富で楽しめたうえ参考になった。
第10章「図10-5」によると参謀本部と有栖川宮邸は目と鼻の先。『有栖川宮熾仁親王日記』に柴五郎ほか参謀本部部員が何かと足を運んでいる記述があるが、図をみて心理的距離感までも感じた。中島敦が南洋でしていた仕事も出てきたり興味深い事柄がそここに。寄り道ばかりできりがないので、内容紹介は新書より引用。
横書き登場――日本語表記の近代
縦か横か?右からか左からか?なにげなく見過ごしがちな日本語の「書字方向」に注目してみよう。横書きはいつどのように登場し、定着していったのだろうか。現在の左横書きが受け入れられたのはなぜか。浮世絵から教科書、電車の切符に至る数多くの実例を示しながら、書字方向変遷を精密にたどる、異色の近代日本語史。
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