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2014年11月29日 (土)

 『日本画 名作から読み解く技法の謎』

 何気なくテレビをつけ画面に吸い寄せられる事がある。画面いっぱいに金色のダイオウイカが踊っているのを見たとき思わず見入ってしまった。それで『深海生物の不思議』講座を受講してみた。講師は『潜水調査船が観た深海生物』著者、藤倉克則先生。
 [深海6500]に乗艦して撮影した富士山を逆さに沈めた位のウン千メートル下の深い深い海を、スクリーンに映しだして解説。映像を印刷したレジメもあり親切な説明だったが、門外漢の私には初めての事ばかり。説明の半分くらいしか理解できない。
 それでも、けっこういろいろな生物がいる深海、海底の地形は変化に富んでるしなど想像以上に豊かな世界なのが判った。[深海6500]探査で、近い将来、新たな食料の確保や大地震の予知ができそう。こういう世界もあるのだ。

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 「深海生物」の理解が足りないのを理系が苦手のせいにしたが、文系でも解らないものは多い。絵画、とくに日本画はわからない。まして修復の世界など、難しく大変そうと思うばかり。たまたま、上野の東京藝術大学・陳列館で催されている<美しさの新機軸 ~日本画 過去から未来へ~ 2014.12.3>を見て修復のイメージが変わった。
 修復は傷んだものを修理というより文化の復元、復興なのだと感じた。こういう世界があってそこに携わる画家や職人さんたちの困難、付随する学問など想像したことなかった。
 繊細で美しい絵、力強い絵など見事な模写を愉しんでいた友人に「雨の中来た甲斐がある。誘ってくれてありがとう」と感謝された。こちらこそだ。興奮が冷めないうちに感想を言いあえるって嬉しい。
 ちなみに、<美しさの新機軸>を見学したのは、執筆協力安原成美さんのご縁。

 その日、出版されたばかりの『日本画 名作から読み解く技法の謎』(東京藝術大学大学院保存修復日本画研究室監修、宮崎正明・荒井経・鴈野佳世子編著、世界文化社)を購入した。
 薦められて手にしたけど、絵や図がきれいで説明も易しく判りやすく、ついつい惹きこまれた。

 “面白くてためになる目からウロコの美術指南書”は本当、私も人に薦めたい。当ブログを読んで下さる方なら、精細な印刷の絵はもちろん背景となる歴史も愉しめる一冊。ただ、定価が3500円+税でちょっとお高い、図書館でいかがでしょう。

 次は、本編の<日本画論>から一部引用、それに内容一覧の目次。
 ――― [とらわれからの解放]  江戸文化の特徴は、とらわれから解放されたことです。それまでの日本文化は中国から伝播した文化やそれを模倣した受容の文化を基礎として、伝わってきたものをつくり変えることで形成された文化でした。
 今でこそ芸術においてはオリジナリティが重視されますが、昔は形式が決められていて、それに微妙な変化を加えることで新たな作品を生み出していたのです。しかし、江戸時代に鎖国によって人や物の出入りが規制されると・・・・・・ すべて内に籠っていく文化へと一変します。その結果、発酵していくような日本独自の文化が誕生したのでした。それまではお手本となるものがあったため、ああしてはだめ・・・・・・ こうしなければいけないというさまざまな制限がありました。
 鎖国によって外からの情報が遮断されると、今度はああしてみた、こうしてみたい、と自分で考えるようになり、日本文化のオリジナリティというものが生まれたのです。ここに、とらわれからの解放をみることができます。
 画家たちは様式にとらわれずに創作ができるようになりました。絵の具の盛り上げと垂らし込みという日本独自の絵画技法も江戸時代に大きな発展を遂げます。 また、形のとらわれからも解放されました。仏画でも山水画でも、様式を重んじて形を写す方法が主流でしたが、手本どおりでなくともよいのだという開放感が新たな造形感覚を生んだのです。
 そして、200年以上鎖国を続けた日本が世界に門戸を開いた時、その文化は驚きをもって世界に迎えられました。 (以下略)

               目 次
  第一章 (名作から読み解く素材と技法
受容・変容・超越の日本文化/ 絵画の命 色の探求/ 絵画の「骨」線画の愉しさ/ 多彩なる墨の技法/ 光り輝く仏身を描く/ 截金vs金泥 超絶技巧の競演/ 銀が織り成す幽遠静寂の美/ 彩色裏技/ 表装の裏技/ 神仏の住処を飾る厨子絵の魅力/ 金箔が生み出すユニークな空間表現

  第二章 (よみがえる名画
模倣と超越/ 隠された図像を読み取る/ 世界で共有される失われた文化財/ 仮説から始まる新たな研究/ 特許技術による絵画複製 ①壁画の複製 ②絹本絵画の複製 ③板絵の複製 

 第三章 (誰もが知りたい日本画奥の手
絵を描く前に絵を仕上げる/ スケッチのコツ/ 絵づくりと線描/ 技術の応用/ 彩色のコツ/ 箔の使い方/ 色についての考え方

 [日本画論
 ① 十二支の鼠に学ぶ日本文化  ② しみ込む文化  ③ 目のつけどころ  ④ 現地で絵を描かない理由  ⑤ とらわれからの解放

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 お知らせ
   NHK番組<歴史探偵>
   長谷川等伯の障壁画について。
   放送予定:2023.5.10(水)22:00~22:45.

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