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2014年12月 6日 (土)

星の村天文台とあぶくま洞、滝根町の明治(福島県)

 先だって、フィギュアスケートNHK杯、羽生結弦選手が怪我を押して出場し賛否両論だが、エキジビションの“花は咲く”を見て思った。羽生選手は、東日本大震災の被災者、ひいては困難のさ中にいる人々に励ましのメッセージを届けたかったのではないだろうか。このような応援もあれば、星の村天文台のように“”を届ける方法もある(毎日新聞「福島の星空をみてください」2012.7.19)。

 福島県田村市星の村天文台は東京電力福島第1原発から最も近い天文台で、浜通り(海岸沿い)・中通り(奥州街道)の中間付近、高約640mの空気が澄んだ高原にあり、星空の美しさは折り紙付き。
 天文台も震災で大きな被害を受け休館したが、「絆」と命名した新たな望遠鏡を得て再開。そして小型の望遠鏡を持って各地の避難所や仮設住宅を30カ所ほど回り、星の観察会や天文教室も開いた。

――― 一般的な観察会は親子連れが多いが、被災地ではおじいちゃんやおばあちゃん、車椅子やベッドに寝たままの人までもが望遠鏡をのぞきに来てくれた。木星や土星を見て、手をたたきながら喜んでくれた・・・・・・星の美しさは人々を癒やし、心の復興につなげる力を持っていると痛感した。全村避難となった飯舘村の支援も続けたい(星の村天文台長・大野裕明さん)

 この星の村天文台に隣接して「あぶくま洞」がある。あぶくま洞は1969昭和44年石灰岩採掘中に発見され観光鍾乳洞としてオ ープンして今に至る。このあぶくま洞や瀧根村を明治期の地誌や福島県案内で見ると土地に歴史あり、平安時代までさかのぼる。

――― 本村大滝根山の中腹に鬼穴と称するものあり。入口2丈余、深さ50間余の所に千畳敷と称する広間あり。なお20間余入れば二階と称する所あり甚だ険隘なり。また釣瓶落としいう穴あり。深きこと幾尋なるを知らず石を投ずときは暫くして微音あり。
 伝えいうこの窟は往古、東北の豪賊*悪路王、大多鬼丸など、*田村将軍追討の際、蹙迫身を容るる所なり。逃れてこの穴に潜伏せしものなりと、また近辺に屏風石、羽石などと称する大石あり。懸岩千仞、一臨人をして戦慄せしむ。又平山は金山石灰石にして殆ど無尽蔵なり。
  * 悪路王: 蝦夷の酋長で坂上田村麿に抗した伝説の英雄
  * 田村将軍: 坂上田村麿。平安初期、蝦夷地平定に大きな功績を残した。征夷大将軍の職名は長く武門の栄誉とされた。

 1889明治22年3月以前、菅谷村・広瀬村・神股(又)村だったが、明治22年4月から瀧根村となった。瀧桜で有名な三春町を距たること5里余り。戸数400余、人口3千余。物産は米、馬、蚕糸、薪炭、煙草なりとす。特に菅谷大六より産出した煙草は字名が煙草名となったほど。酒も、大正期『東北醸造家銘鑑』によると、滝根村・先崎徳蔵275石、猪狩孫一41石、二人の名がある。

――― 人情風俗。田村郡の人は性質朴直にして義侠心に富めり、然れども其性情の致す所、大事偉業を企図する者少なく、従って大財産家、大偉人を出さず。又義侠心に富めるが故に常に自己の損益を顧みずして他人を助け、又公共のために尽瘁する事を厭わざるの風なり。従って各自に於ける生計の度きわめて低く、概ね清貧に甘んずるものの如し。本郡の文学美術は大いに発達せるものの如し。*平野金華など・・・・・・。
  * 平野金華: 江戸期の儒学者。荻生徂徠の門に入り、服部南郭とならび詩文に長じた人物。奥州に生まれたので金華と号した。

 ――― 滝根村。尋常小学校は菅谷、神又、広瀬にあり。巡査駐在所は神又にあり。社寺は菅谷神社などあるが、入水寺は御朱印付にて殿堂壮麗近郷に稀なる大寺なり。しかし、有名な翁杉の中腹より発火し全伽藍灰燼となれり。灰中骨および脂の如きものありこれ大蛇なりしならんという。寺の後方に玉滝あり有名なり。
 木村にはつるヶ池、ます池、小野小町の片葉葦などの奇話及び古跡と称するもの数多あり。広瀬に鉱泉あり、打ち傷、切り傷に妙なり。

 参考: 『田村の誉』1904遠藤常師・坂本活版所/ 『最新田村郡小地誌』明治36、1903根本隆治著/ 『福島県町村沿革便覧』1894遊佐勝司編/ 『東北醸造家銘鑑』1924田子健吉編 東北醸造家銘館刊行会/ 『福島県案内』1931半崎多七 発行 古今堂書店

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