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2015年6月20日 (土)

農民作家、斎藤利雄 (福島県飯野町)

Photo_2 けやきのブログも今回で記事数が350件、毎回、誰にしようと考えるが、迷ったときは地元の出版物が一番。それで『福島県民百科』(1980福島民友新聞社)をみていたら、―――斎藤利雄・農民作家。飯野町に生まれる・・・・・・小学校卒業と同時に好間炭鉱で働いたというのがあった。いくら昔でも子どもなのに炭鉱で働かざるを得ない境遇とは、そこからどう抜け出したのか。手元の人名事典をみたが斎藤利雄は載っていない。地元で知られるのみで埋もれているようだ。福島県のHP“うつくしま電子辞典・人物編”には写真と紹介が載ってい、参考にさせてもらった。
 斎藤利雄の履歴を書きぬきながら、困難な境遇にいながら社会一般の心配をするような人物、今では少なそうと思った。自分も含めて身の回りのことしか考えていない。せめて、その事蹟をみてみよう。

    斎藤利雄
           1903明治36~1969昭和44年

 現在の福島県福島市飯野町に生まれる。
  飯野町: 福島県北部。1955昭和30年、伊達郡明治・大久保・青木の3村と合併。町域は阿武隈山地に属し、起伏に富む。養蚕、畜産の地。中心の飯野は川俣・二本松街道の宿駅。
 大久保とともに絹織物の産地で大正初期まで三・八の日に市が開かれ、羽二重を売買。飯野・大久保に小機業工場が多く、絹・人絹織物を生産。千貫森は行楽地。

 1912明治45年、9歳のころ一家で岩城好間に移住。小学校卒業後とともに好間炭鉱で働き、労働者の苦しみを知る。
   好間炭鉱(よしまたんこう): 古河石炭鉱業株式会社好間炭鉱。福島県石城郡好間村。近くに好間村水利組合の用水堀・好間川あり。採炭数、1935昭和10年・264.566トン。鉱夫数、男954・女150(坑内474、坑外630)。(『炭鉱案内』1936石炭鉱業連合会)

 大正7年、15歳で上京。美術に魅せられ、東京の*「川端画学校・洋画科」で学ぶ。苦学して美術を研究中、結核に冒され、帰郷して療養。
   *川端画学校: 1909明治42年2月創立。小石川区富坂町19(市電春日町下車)。入学資格、日本画(高小卒業以上) 洋画(一年以上実技を修得せる者および中学3年以上の学力ある者)。修業年限、3年ないし5年。学資、一ヶ月4円。教員数9名、生徒数300名(『小学卒業立身案内』1934帝国教育会出版部)。

 1931昭和6年、再び上京。小説の挿絵を描いたことから、小説家を志す。福田新生の紹介で**『文芸戦線』に参加して、鶴田知也との共同作『町工場』を管野好馬のペンネームで連載するも、考え方の違いから脱退。***『戦旗』に入会して「同志小林多喜二を想ふ」を発表したが、弾圧と病気の再発で帰郷した。

   **『文芸戦線』: (大正13~昭和7年) プロレタリア文学雑誌。関東大震災によって、反戦と平和と被抑圧解放のスローガンを掲げて注目された『種蒔く人』が廃刊されたあと創刊。プロレタリア文学運動の代表的発表期間として大きな役割を果たした。

   ***『戦旗』: (昭和3~6年) 共産党に対する弾圧(3.15事件)のあと誕生した全日本無産者芸術連盟の機関誌。ここに発表された小林多喜二『蟹工船』、徳川直『太陽のない町』は評判となった。演劇でも左翼劇場が結成され、地方にも影響を与えたが、このプロレタリア文化運動は、軍国主義の台頭と治安維持法のたびたびの発動により、壊滅させられた(『民間学事典・事項編』1997三省堂)。

Photo_3 帰郷後は、農作業と小さな商店を営みながら小説を書き、『日刊農業新聞』に「大隈川流館」を連載した。その他、郷土史から取材した『二本松少年隊秘話』『会津士道訓』のほか、代表作『橋のある風景』 『天明柏羽雀』などが知られる。

 農民作家として、戦前・戦中・戦後の厳しい状況の中でもあたたかさと楽しさがある作品をつくり、読む人に感銘を与えたという。

 1948昭和23年から町会議員を2期8年間、明治村村会議員として村政発展につくした。また、町文化財保護委員・町史編纂委員をつとめ、地元に残した足跡は大きい。
 2002平成14年、地区民が飯野町に顕彰碑を建立。

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