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2019年3月30日 (土)

社会人野球、不世出の名捕手・久慈次郎(岩手県)

  2019平成31年3月23日、毎日新聞一面は明るいニュースが並んだ。
   <復興鉄路つながった 8年ぶり宮古-釜石三陸鉄道に> 写真、三陸鉄道リアス線の全線開通を祝って開かれた記念式典(岩手県釜石市)。
   <センバツ開幕>  写真、開会式で一斉行進する選手たち。
 岩手代表、盛岡大付属高校の初戦。茨城代表・石岡第一高校と対戦、先取点を奪われる。先行されても粘る投手、受ける捕手の必死のやりとりはチームを奮い立たせたに違いない。小柄なエースは11回を投げきり盛岡大付は延長11回3:2逆転サヨナラ勝ちした。
 さて、岩手県は「その人物、技量、彼の右に出る捕手はいない」と飛田穂洲に絶賛された名捕手・久慈次郎の出身地である。

          久慈 次郎        (くじ じろう)

Photo_6  1898明治31年10月1日、岩手県盛岡市外加賀野、北上川の支流中津川の畔の久慈清・ツヤの次男に生まれる。
  ?年、 岩手師範附属小高等科に兄の家(特定郵便局長で加賀野に居住)から通学。 
  ?年、 盛岡中学校(盛岡第一高等学校)に進学。
     久慈は野球より絵を描くことを好み、画家を目指していた。
 1915大正4年、全国中等高野球大会が開かれる。
     盛岡中は野球が盛んで、東北予選に出場するため野球のできそうな者を盛んに勧誘していた。5尺8寸(180cm余)と長身の久慈は野球部へ引き入れられる。
 1916大正5年、第2回中等野球大会東北予選に主将として出場。東北地方代表権をかけて一関中と優勝を争うも敗れ、岩手県初の全国大会出場権は得られなかった。

 1917大正6年、野球の名門、早稲田大学理工学部に入学。
    野球部監督の飛田穂洲に心酔、「一球入魂」を座右の銘とし、先輩の名捕手・市岡忠男(のち草創期の巨人軍監督)の下で捕手としての技能を磨いた。
 1920大正9年、春から秋にかけて久慈の進境は著しく強肩で二塁を踏ませなかった。
    このころからヒゲをたくわえ、長身を折り曲げてはサインを送り、捕球するや二塁へ矢のような送球、相手走者を刺す様は見る者を感嘆させた。しかも、失投を防ぐ投手のリードにもすぐれていた。打つほうも相手にリードされていても「心配ご無用」と笑みをたたえて打席に立ち、ヒットを飛ばした。ファンの期待にこたえ仲間の信望を集めた。
 久慈はホームラン打者ではなく、いわゆるチャンスに強いバッターであり、火の出るような当り方であった。選球眼に秀れ、チームの主要打線の一端を担って活躍した。
  そのころ、大隈重信との背比べに勝ち、大隈に「我輩より高いとはたのもしい」と賞賛されたというエピソードが残っている。

 1922大正11年春、早大を卒業。久慈は母の出身地であり、妻の実家がある函館へ。
    引く手あまたの名捕手久慈は、月給40円で函館水力電気会社(現交通局)の営業係として社会人としてのスタートを切る。身の丈のノッポの新米社員は、人柄も非常に良く真面目で上役にも可愛がられていたという。
 そして、早大野球部の創設者である。押川清橋戸信らの勧めもあり、また久慈にとって先輩の橋本隆造がエースとして活躍している実業団野球チーム函館太洋倶楽部(函館オーシャン)に入り、全国都市対抗野球大会がはじまり捕手として活躍、北海道球界に“久慈旋風”を巻き起こした。

 1927昭和2年、函館水電を退社し、クジ運動具店を開業。店主として10人ほどの従業員を雇った。
 1930昭和5年からは函館オーシャンの監督も兼任、名捕手兼監督として人気があった。
   函館オーシャンスタジアムには久慈がミットを構えている銅像が建つが、その銅像は、全日本で一緒にプレーし、東京巨人軍入りを強く推薦したヴィクトル・スタルヒンの銅像が建つ旭川スタルヒン球場の方角を向いている。

 1931昭和6年秋、日米野球大会が開かれ全日本軍の主将をつとめた。
    沢村栄治とバッテリーを組む。その強肩で盗塁を企てるアメリカ球界の花形三人を連続刺殺し、ファンをうならせた。
 全米オールスターチームは全12都市(東京、函館、仙台、富山、横浜、静岡、名古屋、大阪、小倉、京都、大宮、宇都宮)で全日本チーム等と16試合が開催された。野球の本場から有名選手が来て盛り上がった。

   “1928ワールドシリーズ、ベーブ・ルースと会った 河野安通志”
    https://keyakinokaze.cocolog-nifty.com/rekishibooks/2013/12/1928-3d57.html

  1934昭和9年、日米野球大会でも久慈は全日本軍の主将を務め、好リードと強肩でベーブ・ルースルー・ゲーリックらと対戦。沢村栄治投手をリードした。
  Photo_7  ――― 日米親善試合11月20日                                
     善戦! !  全米 対 全日本  1-0
     写真 ベーブ・ルース(『国際写真新聞』1934/11/15 )
     静岡草薙球場の第10戦に沢村栄治が登板、ゲーリッグのホームランで試合は負けたが好投。

 この年、日米野球をきっかけとして日本最初の職業野球チーム(東京読売巨人軍)が誕生、沢村は参加する。久慈も破格の待遇で主将として参加を要請されたが辞退。
 ちなみに、沢村投手は昭和19年、軍に招集され台湾沖で戦死。背番号14は巨人軍の永久欠番である。
 
 この年3月21日、函館に猛火。焼失2万2600戸、死者650人、関東大震災に次ぐ大災害であった。この大火により市街は壊滅的なダメージを受け、久慈は復旧のめどもつかない函館を出ることが出来なかったのである。
 なお、函館オーシャンも都市対抗野球大会の出場を辞退する。

 1936昭和11年、函館市会議員補欠選挙に当選。
    この年、函館市議会に欠員が生じ、日米野球の函館開催に尽力し函館復興に心血を注いだ久慈を政治の場にとの声が上がる。本人は「議員なんて似つかわしくない」と発言し積極的な選挙活動は行わなかった。ところが開票をしてみるとなんと3位で当選。
    久慈の函館市議会員としての功績として野球場やテニスコート、スキージャンプ台を兼ね揃えた函館市民運動場(汐見市民運動場)の設計がある。完成したのは久慈の死後1年であった。現在は函館市立潮見中学校の敷地となっている。

 1939昭和14年8月21日、死去。享年41。
    札幌・丸山球場で全国都市対抗をかねた北海道・樺太実業団野球大会開催。
  久慈の函館オーシャンは1回戦で札幌クラブと対戦。選手兼任監督としては出場し5回の守備からファーストについていた。
 1:2とリードされて迎えた7回、四球で一塁に歩く際、ホームベース上で次の打者に指示を与えようと振り向いた瞬間、走者が飛び出した二塁に向けて投げられた相手捕手の牽制球が右のこめかみを直撃、久慈はホームベース上で昏倒。市立札幌病院に運ばれたが2日後、頭蓋骨破損による脳出血でついに帰らぬ人となった。
 その死は全国に報じられ、遺体は臨時列車で函館まで帰ってきた。久慈の棺を乗せた列車は札幌から函館に向かったが、停車駅ごとに熱烈な野球ファンが駅に詰めかけて、久慈の死を惜しんだ。葬儀には1000人を超える参列者が続き、沿道には最後の別れを惜しむ市民が埋めつくさんばかりにあふれていたという。
 久慈の墓は函館市の称名寺に建てられ、その形はボールをかたどったものとなっている。
遺骨は盛岡の正覚寺、東京芝の増上寺に分骨された。
 ちなみに、久慈の死後生まれた遺児は、久慈次郎の名を襲名、横浜で建築関係のデザイナー・設計業を営んでいる(平成4年12月20日記)。

   * 昭和34年、東京後楽園「野球体育博物館」にプロ野球初の最高殊勲選手・沢村栄治らとともに表彰額が掲げられた。
   * 久慈の活躍と敢闘精神を記念、昭和22年第18回大会から全国都市対抗野球大会の特別賞の一つである「久慈賞」が設けられた。
   * 昭和52年8月、39回忌にあたるこの年、故水原茂氏の筆による「球聖久慈次郎の像」が千代台球場の正面横に建てられた。


    参考:『岩手の先人100人』1992岩手日報社(久慈の写真) / 『コンサイス人名辞典』1993三省堂 / 国立国会図書館月報 2013-10-20(ベーブルース写真) /  はこだて人物誌 インターネット / ウイキペディア

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  平成31年4月2日 巨人・阪神戦!
 新元号が「令和」と決まった翌日の東京ドーム。
 試合前、長嶋茂雄元監督の登場で盛りあがった。現役時代のかっこいいサード長島を知るファンとして嬉しいかぎり。
 病に倒れても必死にリハビリ、頑張る姿がまたカッコイイ。巨人ファンならずとも、長島茂雄さんの明るく前向きな生き方に励まされるでしょう。
 また、卓球の伊藤美誠選手が始球式に登場、なかなかいい投球をみせた。試合は9:3で巨人の勝利。野球は巨人、卓球大好きにはうれしい夜でした。
 アンチ巨人のみなさん、共にプロ野球応援がんばりましょう。 2019.4.3
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2023令和5年2月9日
  テレビ番組<何でも鑑定団>久慈次郎が遺した「1934昭和9年、日米親善試合 メンバー表」が出品され、評価額一千万円!
 途中から見たので詳しいことは判りませんが、思わず追記しました。
 それから89年の今年3月、WBC・ワールドべースボール・クラシック開催! ベーブルースの記録を抜いた大谷選手やダルビッシュ選手の活躍が楽しみ。日本の優勝を願っている。

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