『ヤング・ジャパン』著者・歴史家、ねず まさし
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いきなり過去記事を並べて芸がないが、東洋文庫が好きで人にも勧めたい。図書館で借りて読むが、常に手元におきたいのは買う。『ヤング.ジャパン』全3冊もそうだ。
『ヤング.ジャパン』横浜と江戸(全3巻)J・R・ブラック著、ねずまさし他訳。
大好きな『ヤング.ジャパン』だが訳者を気にしたことがなかった。ところがある時、数多ある註、時代を見通す解説を再読し訳者・ねずまさしが気になった。
人名事典をひくと名はあるものの詳しい記述がない。
もしかすると、ねずまさし、本名・禰津正志の思想、硬派な生き方や経歴に圧倒されるからかもしれない。そうだとすれば、ただの歴史好きの自分も同じだが、せっかくだから判る範囲でみてみた。
まずは『ヤング.ジャパン』ねずまさしの解説を一部引用、
―――本書(『ヤング.ジャパン』)のように、日本と関係の深い良書が1880年、すなわち明治13年という早い時期に出版されたにもかかわらず、80年後の今日(昭和35年)まで、翻訳ずきな日本人から訳されないで来たことは、ひとつの不思議といわねばならない。
たとえば、サトーの『日本における外交官』にしても、戦前にいちおう訳されている。ルサンの『幕末海戦記』しかり。オールコック『大君の都』は戦後だが、訳された。・・・・・幕末維新史にたいする資料的価値は、『大君の都』にまさるとも、劣るものではない。
訳者が、本書の翻訳を企てたのは、太平洋戦争中だった。というのは当時海賊版が日本で発行され、よく売れたからであった。しかし、空襲激化のため、思いとどまらざるを得なかった。・・・・・
ねず まさし (禰津 正志)
1908明治41年11月18日、東京で生まれる。
1932昭和7年、京都大学卒業後、フランス留学。
フランスで人民戦線文化運動を目撃して帰国。
1933昭和8年、滝川事件。
京大教授滝川の講演や著書が共産主義的であるとされ滝川は休職処分。そうした騒々しい社会状況を学問・文化の危機ととらえ、多くの論文によりファシズムへの抵抗運動を展開。
1935昭和10年、京都で創刊された月刊雑誌*『世界文化』に参加。
『世界文化』:商業誌では隠蔽されていた欧米の反ファシズム文化動向を伝えるこの雑誌は、京都の一地方紙でありながら、抵抗文化の希少な実例として歴史的意義をもつ(『民間学事典』)。
*講座派の流れをひく雑誌『歴史科学』などに坂文夫のペンネームでヨーロッパの政治事情を紹介。
講座派:昭和初期の日本資本主義論争において、労農派と対立した学派。
1936昭和11年、文部省維新資料編纂局に入る。
維新史料編纂会:明治維新史料の収集・編纂を目的として創立。初代総裁・井上馨。現在、この事業は東大史料編纂所に引き継がれている。
1937昭和12年、日中戦争はじまる。
ねずまさし、久野修(『世界文化』同人)らと検挙される。
1939昭和14年、出獄。招集をうけて入隊。
この入隊、軍隊経験によって、天皇制が憲法以外に広さと強さを持つことを認識。
1941昭和16年12月、日本海軍の真珠湾攻撃により太平洋戦争はじまる。
1945昭和20年、太平洋戦争敗戦。
戦後、ねずまさしは民間にあって庶民の視線で時代を見つめる。
1954昭和29年、文化学院講師。
1955昭和30年、「昭和史論争」
遠山茂樹らの共著『昭和史』にたいし、亀井勝一郎は教条的・公式的な歴史叙述と批判、「昭和史論争」をおこす。
ねずまさしも、遠山茂樹・井上清を公式主義的人民史観として批判、また、〔国民のための歴史学〕運動における石母田正・藤間生太の指導責任を追及。
1966昭和41年~1970昭和45年、『日本現代史』全7巻など著作を発表。
1986昭和61年、死去。享年、78。
―――日本現代史について多くの著作を発表。研究と実践を通して反ファシズムの視点から学問の自由を主張、戦前から戦後まで一貫して藩権力の立場に立って行動した三〇年代の我が国の知識人を代表する一人。(『民間学事典』)。
―――この本が、日本の一般読者ならびに青少年の間に、合理的な歴史の考え方というものを知るうえに、多少なりと貢献するところがあれば、訳者の喜びこれにしぎるものはない。 伊豆九連海岸にて(『歴史トは何か』ねずまさし後書き)。
何気なく、この人と思い取り上げたが、ねずまさし本人の史資料、エピソードがとても少ない。筆者の未熟は無論だが、ねずまさしの目指す方向にもあるのだろうか。生意気いえば、もっと知られるといい。
ねずまさしの著書: 『天皇家の歴史』 『天皇と昭和史』 『日本現代史』全7巻 『現代史の断面・戦時総動員体制』 『新しい日本歴史』 『フランス人民戦線』 『人間の歴史・世界文化小史・歴史トは何か』ほか多数。
参考: 『民間学事典』事項編・人名編1997三省堂 / 『ヤング.ジャパン』1987東洋文庫 / 『近現代史用語事典』安岡昭男編1992新人物往来社 / 『世界教養全集16』(歴史とは何かG.チャイルド ねずまさし訳その他)1974平凡社
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