さあ、氷上芸術の世界へ『フィギュアスケートと音楽』 町田樹
「チームジャパンが明るく過ごせたらいいなって思って」
ミラノ・コルティナ冬季オリンピック・フィギュアスケートで銀メダルに輝いた坂本花織選手の言葉です。これまで困難苦労もいっぱいあったでしょうに、自分の試合がこれからというのに、仲間を応援する坂本選手! その心意気はTV画面のこちらまで伝わった。
次は、2026.2.22毎日新聞「町田樹の解雪・氷論」より
---今回おそらく誰よりも金メダルを強く意識していたであろう坂本選手は、惜しくもその目標には一歩届かなかった。しかし集大成として作り上げたフリープログラム「愛の賛歌」を、この五輪という大舞台でも世界随一のスケーテイングスキルを駆使して見事に演じきり・・・・・・(中略)・・・・・・坂本選手がフィギュア界に残した功績にも触れておきたい。近年のジャッジは、スケーティングの推進力とそれを損なうことなく技に直結させる力を最も高く評価しているのだが、そもそもそうしたスケートが評価される潮流を作り出したのは、紛れもなく坂本選手だと私は考えている。・・・・・・(2026.2.22毎日)。
近年、ファイギュアスケートで活躍する日本人選手は少なくないが、明治・大正の新聞でフィギュアスケートは見当たらない。
思えば遙か昔の女子高生時代、同級生三人で東京池袋のスケート場に行った。
その節、貸し靴でリンクに入るのにヨタヨタ、もう大変。係員の手を借りてどうにかリンクに入り、手すり磨きをするうち、どうにか滑れるようになったのを想い出す。
楽しかったその翌日、担任から職員会議で注意があったと伝えられた。
担任は私たちが不良でもないから叱らなかったけど、それにしても電車の乗って見回っていたとは・・・・・・そんな時代だった。
こうしてみると、フィギュアスケートはいかにも新しい。
国会図書館デジタルコレクションを閲覧すると、大正14年の全国学生氷上競技連盟『スケート競技規則』に「フィギュア・スケーテイング競技規則」が載っていた。
競技者:第一条 競技者ハ抽選ニトイリ一人宛順次ニ競技ヲ行フモノトス
審 判:第二条 競技ニ際シテ少クトモ三名以上ノ審判者ヲ要ス
第三条 審判者ハソノ審判中互ニ離レテ位置シソノ意見ハ独立ニ決定サルベキモノトス
採 点:(以下略)
町田樹監修『フィギュアスケートと音楽』2022 音楽之友社
はじめに-----氷上芸術への誘い
フィギュアスケート文化にとって音楽は生命線だ・・・・・・(中略)・・・・・・ファイギュアスケートとは、いわば「音楽を滑りで表現する舞踊」だ。・・・・・・実は、フィギュアスケートもまた、音楽の新たな可能性を開拓することに貢献している。優れた能力を備えているスケーターであれば、あたかも身体からメロディーやリズムが奏でられているのではないかと錯覚するほど、音楽表現豊かなスケーテイングを披露することが4できるだろう。
・・・・・・ ( 中略 )・・・・・・
氷上の世界にもファイギュアスケートだからこそ可能となる独自の音楽表現がある。
音楽家とアスリートの身体性と表現
反田恭平 × 町田樹
(反田) ・・・・・・ファイギュアスケートはいつから始まったんですか?
(町田) 19世紀の半ばに、ニューヨーク出身のバレエダンサー、ジャクソン・ヘインズが始めたといわれています。南北戦争をきっかけにウィーンに渡った彼が、当時大流行していたスケートとバレエを融合させ、音楽に合わせて滑る今のスタイルを確立しました。まるで身体が奏でているかのように音楽そのものを表現することも、音楽の中の思想や情感、ドラマ性を抽出して表現することも、どちらも可能にしたのです。
フィギュアスケートにおける選曲と編曲
フィギュアスケートは、スケートリンクを滑走し、ジャンプ、スピン、ステップなどの技術を競うスポーツだが、同時に芸術性も求められる採点競技だ。さらに競技生活を終えプロに転向したスケーターたちはアイスショーに出演し、“競う”ことから解き放たれて、美しさや表現力で魅せることになる。・・・・・・
フィギュアスケートにおける振付と実演
コンセプトに合う演奏を選定 / 音楽がすべての源 / 解釈の幅を広げてくれるクラシック音楽 / 衣装も表現の重要な一部 / 衣装、照明、音響・・・総合芸術でもあるフィギュアスケート
Interview 田中刑事(プロフィギュアスケーター)
感情のおもむくままに音楽を感じて
Special対談 福間洸太郞 × 町田樹
フィギュアスケーターへの音楽著作権啓発
身体表現と音楽
スポーツの側面を持ちながら、芸術性も求められるフィギュアスケート。・・・・・・
ファイギュアスケートの採点とは何か
フィギュアスケートは、技の完成度や演技の美しさを競う「採点競技」・・・・・・
音楽を身体で可視化する
原田慶太楼 × 町田樹
---僕は物語のある音楽にすごく魅力を感じる。オペラやバレエ、ミュージカルは最高の総合芸術だと思う ---原田
---“舞踊やフィギュアスケートは音楽なしでは表現できない。音楽には最大限のリスペクトの気持ちを抱いて表現します”---町田
フィギュアスケートの鑑賞術
① 演技を観る前の着目ポイント
(一) 背景 (二) 音楽
② 演技中の着目ポイント
(三)技術 (四)構造 (五)様式
(六)語彙 ・・・・・・語彙を増やせば増やすほど、豊かに文章を書くことができる。それと同じように、フィギュアスケートもターンやステップ、ジャンプ、スピンのバリエーションを増やすほどに、多様な方法でいろいろなことを表現することが可能になる。したがって、目の前のスケーターが動きの多様性という意味での語彙力をどれほど備えているか、そしてその語彙力をどのように発揮しているのか、といったことを観るのもひとつの手だ。・・・・・・スケーターや振付師の創意工夫を楽しむこともフィギュアスケートの醍醐味である。
(七) 相貌
舞踊美学の領域では、人は誰もがその身体に「相貌」を持つと言われている・・・・・・当然、フィギュアスケーターも、十人十色の相貌を持っていることだろう・・・・・・相貌に着目すると、スケーターの魅力に気づくことができたり、選曲や振付の意図または戦略など読み解くことができるのである。・・・・・・
(八) 表現
程度の差こそあれ、スケーターはプログラムを演じる中で何かを表現しているはずである。・・・・・・フィギュアスケートの演技とは、すなわち表現行為だ。・・・・・・
(九) 比較
(十) 歴史
競技の場合、必ず得点や順位、勝ち負けなどの結果が明らかになる。・・・・・・観た演技をどのように評価するか、自分なりに考えてみることも大事なポイントだと私は考える。・・・・・・あなた自身のやり方、あなた自身のペースで自由にフィギュアスケートを観ていただけたらと思う。・・・・・・まだ会場で直接フィギュアスケートをみたことがない方は、是非一度スケートリンクに足を運んでみてはいかがだろうか・・・・・・(『フィギュアスケートと音楽』2022音楽之友社)。
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